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佐藤さんのお役立ち気象歳時記

記録的豪雨1808.5ミリ

「明治22年吉野郡水災誌」に 「19日ニ及ンデハ雨虐暴横ヲ極メ、百渓萬澗悉ク漲溢シテ天之川ニ流注セリ。 是ニ於テ和田・庵住・山西ノ各橋(獨木:まるき)全テ流落シ彼我来往正ニ断絶セラレタリ」 と記述され、 175人の犠牲者と家屋の流失・全壊1017戸を出した1889(明治22年)8月の 十津川大水害に匹敵する水害が、熊野川流域を中心に紀伊半島で発生した。

図1 図2 総雨量分布
(ただし解析雨量)

台風12号により8月30日から9月4日にかけて、大台ケ原の西、熊野川の支流北山川沿いの奈良県上北山村小橡(標高334m)の気象庁アメダス観測所で、1808.5ミリの総雨量を記録した。因みに上北山村河合(標高349m)の奈良県のでも1861ミリ、国交省大台ケ原(標高1620m) の観測所では2436ミリの豪雨が観測された。

図3
台風12号経路図
図4 衛星赤外画像(1日09時)
図5

今回の台風は紀伊半島の西側、四国から中国地方をゆっくり北上する特異な速度・コースを取ったため、紀伊山地に長時間、南よりの暖かく湿った風が吹き付け、豪雨となった。

上北山村では8月30日夜から雨が降り始め、9月1日には雨足が強まった。そして2日~4日朝にかけて時間20~30ミリの雨が降り続いた。日ごとの雨量は8月30日0.5ミリ、31日67.5ミリ、9月1日231ミリ、2日582ミリ、3日661ミリ、4日266.5ミリ(後観測停止)であった。最大72時間雨量は1652.5ミリに達し、1976年統計開始以来の国内最高記録宮崎県神門(みかど)の1322ミリを大幅に更新するものとなった。

(資料は気象庁HPによる)

執筆者紹介:

佐藤 英雄 (さとう ひでお) ・・ FIO会員、事務局担当のひとり

佐藤さんの写真 民間の気象会社に34年間勤務し、気象の観測・調査・設計、解説・予測などに従事。気象予報士でもあり、森林インストラクターの眼からみた「気象」のお役立ち情報を、月1回のペースで、わかりやすく解説します。