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佐藤さんのお役立ち気象歳時記

日本一、本州一、大阪一の寒さ

人が生活していて、気象庁の観測が行われている場所を対象とする。 気象庁HPでは、寒さの第1位は北海道旭川-41.0℃、第2位は帯広-38.2℃が上げられている。 1902(明治35)年1月25・26日、青森歩兵第5連帯が八甲田山雪中行軍で遭難の悲劇に見舞われたが、 その時の寒さである。 旭川、帯広のそれぞれのベスト10は全て-35℃以下であるが、いずれも明治時代の記録である。 図 1970年代半ば以降始まったアメダス観測所では1978年2月17日、 第3位上川支庁江丹別-38.1℃、第4位宗谷支庁歌登-37.9℃、 第5位上川支庁幌加内-37.6℃を記録している。 もっとも、この日上川支庁幌加内母子里(北大演習林)で戦後第1位の-41.2℃を観測した。 因みに、地球規模の温暖化と都市のヒートアイランド現象が影響してか、 この日、旭川・帯広とも-30℃以下にはなっていない。 なお、1931年1月27日上川支庁美深で-41.5℃を観測しているが、 これが日本最低と言えるだろう。 ところで、「日本一寒い町」を観光の目玉として売り出している十勝の陸別町が顔を出していないのは意外であるが、 冬の毎朝の最低気温の全国第1位の回数ランキングが「日本一」だそうである。 結局、日本で一番寒い場所は北海道中部・北部の内陸部にあることは間違いないようだ。

1945年1月26日岩手県盛岡市藪川(標高680m)で観測された-35℃が本州一の寒さであるようだ。 「日本のチベット」と言われる岩手県の中でも寒い所、 それで藪川を「日本のシベリア」と言う人もあるくらいである。 ある気象学者によると、標高が高く冷気の滞り易い盆地状の場所で、 強い寒気団に覆われながら穏やかに晴れた星降る夜、しかも地表が新雪に覆われていたとき、 記録的な低温が発生するとされている。 図 確率的に100年に1度の低温は、北海道で-43℃、東北で-36℃、四国・九州で-20℃と計算されている。

ところで、大阪にもチベットがあるのをご存知だろうか。大阪府の最北端、豊能町天王(589m)で1963年1月26日観測された-18.5℃は、なかなかのものである。私は、ひそかに信州軽井沢(999m)並みと思っている。 なお、美深、藪川、天王の値は、気象庁HPに公開されていない。アメダス気象観測以前の委託観測の時代の区内観測所のデータだからである。各地気象台保管の原簿に記載され、気象百年史などに掲載されている (天気図は(財)日本気象協会「天気図集成」より)。

(2012年1月)

執筆者紹介:

佐藤 英雄 (さとう ひでお) ・・ FIO会員、事務局担当のひとり

佐藤さんの写真 民間の気象会社に34年間勤務し、気象の観測・調査・設計、解説・予測などに従事。気象予報士でもあり、森林インストラクターの眼からみた「気象」のお役立ち情報を、月1回のペースで、わかりやすく解説します。